自分の事を心配した上での口止めなのだろうけれど……その優しさは、なんだか自分には勿体無い様な気がした。
こんな時だからこそ傍にいてあげたいのに…彼女の傍にいてあげられない自分がなんと歯痒いことか。
そしてこんな時だからこそ感じるのが……私と、彼女の…。
「………分かった。それじゃあお父さんは大人しくここで寝ている事にするよ。…大丈夫、エルシアは何も悪いことはしていないよ。……もし、お母さんの具合が悪くなったら、すぐにお父さんに報せるんだよ………いいね」
「………分かったニャー。お父様が来たら、お母様もすぐによくなるものね」
そう言って笑みを浮かべるエルシアだったが……当のクロエは笑顔のまま、ゆっくりと枕に顔を埋めてしまった。
…頭の痛みが増したのだろうか。
不安になって見詰めるエルシアに……くぐもった父の声が、少しずつ…聞こえてきた。
それは、いつもの優しい父の声なのに。
いつもの父とは、少しだけ違うものだった。
「………私よりも……娘のお前達が傍にいてあげた方が……………お母さんはきっと良くなる」
「………?」
分からない、とエルシアは首を傾げる。
父がどうしてそんな事を言うのか、どうしてそんなに……悲しそうなのか。
エルシアには、よく分からない。
どうして?と返事をするよりも早く……クロエのくぐもった声はポツリポツリと紡がれ、そして消えていく。
「………………お父さんは……私は、お母さんを愛している。彼女の事を愛している………………けれどね…エルシア」
私は、娘に一体何を言っているのだろう。
「―――彼女は、違うんだよ。………彼女が本当に愛しているのは………………私では、ないんだ…」


