人一倍心配性なエルシアは、クロエが頭痛で寝込むと時折こうやって様子を伺いにやってくる。
寝台の端からぬいぐるみを前に掲げて見せ、柔らかな丸っこい手足を動かして幼稚な人形劇を始めるのだ。
犬だか熊だか猫だかよく分からないそれは、娘の声を借りてクロエに語り掛ける。
「お薬は飲んだのかニャー」
…どうやら、今夜のそれは猫らしい。前回は違う生き物だった気がするけれど。
苦笑を浮かべ、クロエはパタパタと両手を動かすぬいぐるみに口を開いた。
「飲んだよ。とても苦い薬だよ」
「良いお薬は、よく効くってお母様も言ってたニャー」
「じゃあ、すぐに良くなるね」
「でも、頭はまだ痛いのニャー?」
「飲んだばかりだから、まだ少し痛いかな?……でも、エルシアと君がお見舞いに来てくれたから、痛みなんて無くなったなぁ」
「……本当?…だ、ニャー?」
ぬいぐるみの後ろからそっと顔を覗かせたエルシアに、クロエは大きく頷いてその小さな頭を優しく撫でてあげた。
「……お母さんとリネットはどうしたんだい?」
「お母様はちょっぴりお腹が痛くなったって言って…それでリネットはお母様と一緒にいるの」
妊娠中の彼女が腹痛を訴えたというのは、もしかしたら大事ではないだろうか。
…不安に駆られ、鈍痛が響き渡る頭の悲鳴を無視して起きあがろうとしたクロエを……エルシアの小さな手が不意に押さえた。
驚いて見下ろした先のエルシアは、首を左右に激しく振っている。
「ちょっぴり…本当にちょっぴりだから…大丈夫だから……お父様には言わないでって、お母様がね………言ってたから。……お父様は頭が痛いから、起こしちゃだめだからって……」
「………」
心配させぬようにと口止めされていたらしいが、嘘の吐けないエルシアには無理だったようだ。
クロエに言ってしまった事に、おどおどと泣き顔を浮かべていくエルシアを、クロエは溜め息を吐きながら再度撫でる。
「………そうか。ああ、泣かなくていいんだよエルシア。エルシアは良い子だ……お利口さんだ…」


