目を覚ましたのかなと思ったが、その瞳にはまだ瞼が下ろされていた。
金色の長い睫毛が、微かに震えている様に見える。
ポツリと小さく声を漏らしたが……どうやらまだ夢の中の様だ。
うなされているのだろうか…悩ましげに寄せられた眉や、震える肩を見下ろしながら、クロエは起こすべきなのかと一瞬迷ったのだが…。
暗闇の中、少し青ざめた肌を伝ってポロリと流れ落ちた一滴の雫を目にした途端、今の今まで大人しくしていたクロエの胸中はざわついた。
…泣いている?
動揺を隠しきれないクロエの目下で、啜り泣く様にカルレットは小さな嗚咽を漏らした。
閉じた瞼の隙間から滲み出る様に、また一つ透明な涙が零れ落ちる。
「………カルレット…」
独りの時、泣いているとは聞いていたが…実際に目にするそれは酷くクロエの胸を締め付けた。
そっと伸ばした指先で零れ落ちる滴を拭えば、純白のシーツを握っていた彼女の手が、何かに縋る様にクロエの手を掴んだ。
ギュッと握り締め、そのまま自分の頬に寄せていく。
寂しい、寂しい…と啜り泣く少女の様なその姿に、クロエは言葉も出なかった。
…どうしたんだい?
何をそんなに悲しんでいるんだい?
何が君を、悲しませているんだい?
君は、何を考えているんだい?
君は………。
「……カル、レット…」
ただ傍にいて、涙を拭ってやって………それ以外、どうする事も出来ない。
そっと手を離し、震える彼女の隣に横になると、クロエはその華奢な身体を後ろから抱きしめた。
そのまま目を閉じて、クロエは子供をあやす様に彼女の名前と、「大丈夫だから…」という短い言葉だけを囁いた。
それに応える様に、一瞬ピクリと身体を震わせたカルレットが、わななく口を静かに開いた。
夢をさ迷う彼女の言葉は、短くて、とても小さかったけれども……鮮明に聞こえた。


