亡國の孤城 『心の色』(外伝)




アレクセイが周りに惜しまれながらも城を去ってから、数日後。
新しい総団長の就任が決まった。

軍部機関と執務機関は、何処か溝のある関係を持っていて、互いにあまり干渉しあう事が無い。
故に、就任式は基本的に軍部機関だけで行われるのが普通で、国王へのお披露目などは無く、その個人情報ぐらいしか知らされないのだ。


兵士は、国を守ってくれるのだ。そんな彼等の長の就任式を見に行かないなど、失礼だろう。そもそも、見に行ってはいけない理由など無い。

そう考えていたクロエは、是非とも会って話しがしたいと前日から意気込んでいたのだが………早朝から不意に襲ってきた激しい頭痛により、急遽その予定は断念せざる得なかった。


枕に顔を埋め、あー、うー…と、痛みに呻くクロエを、4歳になるエルシアが心配そうに傍で見守っていた。
頭痛を除けば、あとはほとんど健康なのに。

情けない。
この鈍痛と一生付き合っていかなければならないと思うと、うんざりを越えて…もうどうでもよくなる。




「…お父様………大丈夫…?」

温かい小さな手が、フワリと頭を撫でてくれたのが分かった。
短い髪を梳くその優しい感触が、なんだか妙にこそばゆくて、枕に埋めた顔が思わず緩んだ。


我が子の癒しの力は、きっとどんな魔術よりも強大に違いない。

いつもは痛くて仕方ないのに、我が子の愛情の力はどれ程偉大なのか、まさかの眠気が意識を満たし出した。

心地良い睡魔が、悪戯な頭痛の口をやんわりと閉じさせて、クロエを真っ暗な底無し沼に誘い込む。



いいよ、行こうか。


手招きする睡魔の誘いを受けて、クロエは静かに瞼を閉じ、意識を沈めていった。













底無し沼の奥で、クロエは夢に浸った。


懐かしい、夢だった。

ここ最近、眠る度に自分は過去を巡っている様だ。



あまりいい過去では、ない。