亡國の孤城 『心の色』(外伝)




狂気。







それは、何処までも深い奈落の底に堕ちた人間の、なれの果てなのか。


















……人間と同じ。同じように毎日をおくり、同じように生きる……魔の者達。

彼等は、到る所にいる。


漆黒の刺青が所狭しと刻まれた白い肌に、美しいエメラルドの髪。
芸術と言っても過言ではない模様が浮かぶ宝石の様な瞳。

…魔術という不可思議な力を使う彼等は、きっと人が好きなのだろう。喋らぬ代わりに微笑みを向け、手を差し伸べてくれる。治癒能力や占いを扱う、人のために動いてくれる不思議な存在だ。


…その中でも力の強い魔の者は、王族に各一人ずつ、必ずついている。生まれた時から傍にいる彼等魔の者は、王族にとって真の腹心……誰よりも自分に一番近い場所にいる存在なのかもしれない。

アレス…神の使者である彼等は、主である神と王には……絶対服従。絶対服従、なのだ。








彼等は、まるで日光を浴びる木々の様。いつも空を見上げ、日を浴び、静かに呼吸をしている。










当り前の様に、身近にいる存在。








それが、気が付けば。
























………いなくなって…しまっていた。

52世が狂王と呼ばれる前から、王族の中で何か奇妙な動きが見られていたが。………明るみになったそれは、酷く血生臭く、見るに耐えないものだった。


魔の者という優しい彼等が、クロエは好きだった。
首都に立ち寄れば、人の往来の中や誰もいない広場など必ず何処かしこで見掛ける、木漏れ日に包まれた彼等が。

行き交う人々と空、そして広大な城を眺めて静かに微笑む、彼等が。














何か、大事なものが欠けてしまった様に感じるこの国に、クロエは例えようの無い虚しさを覚えた。