頭が痛い。
いつもの頭痛だ。
取りたくとも取れない鈍い痛みが頭の中を駆け巡り、時には立ち止まって地団駄を踏む。
………音色の無い不協和音が、奏でられていく。
どんどん、酷くなっている気がする。
………フワリと、温かくて柔らかな他人の手が、髪を撫でた。
軍議が終了した後、自室に帰り、ズキズキと痛むこめかみを押さえて俯いていたクロエ。
ドアの開閉音も、風が窓を叩く音も、どんな音も今は頭痛を悪化させる要因でしかないのだが…。
………頭に置かれた手の温もりと掛けられたその声は、安らぎを与えてくれた。
「―――…また頭痛?」
「……残念ながら、その通りなんだよ…カルレット…」
痛みに耐えながらも苦笑を浮かべ、クロエは添えられたその温かな手を握りしめた。雪のように白くて、細くて、綺麗で……優しい、そして愛しい手だ。
ゆっくりと振り返れば…ああ、そこには、自分が一番好きな笑顔があった。いつ見ても、何度見ても、飽きることなど無い。ありはしない。
初めて会った時のあの形容しがたい胸の高鳴りは、今になっても、変わらないのだ。
「……お薬はお飲みになったの?」
「…あまり効かないんだよ。…苦いし」
「…まるで子供ね。エルシアは文句一つ零さずに飲むのに」
くすくすと上品に笑う彼女。
後ろに束ねた長い金髪は太陽の色を帯びていて、澄んだ青空の瞳で、纏う空気は暖かくて、輝いていて。
この世でたった一人。
自分が、恋をした女性。……初恋だった。その初恋を実らせた自分は、なんて幸せ者なのだろうか。
いつもそう思っている。……彼女には、とてもじゃないが恥ずかしくて言えないけれど。


