亡國の孤城 『心の色』(外伝)






「―――………それで……その正体不明の化け物とやらが何なのかは、分かったのかい?」

「…いえ。姿形もはっきりしていない上、目撃情報も極僅かで御座います。それよりもまず本当にそんな化け物が存在するのか……」

「………………弱ったなぁ…」


















このところ、軍議の議題はこの話ばかりだった。



………数年前から、だったか。

………夜になると、森の中から獣とは明らかに異なる“何か”がたまに現れる…という、奇妙な噂が国内に溢れ始めたのだ。


当初は見間違いだとかで片付けられていたのだが、その申告者が年々増加の一方を辿っており、それがとうとう田舎に止どまらず首都でも目撃されたため、放ってはおけなくなってしまった。

………化け物など……このフェンネルにはいないはず。首都の民は面白半分で噂し合っているが、果たしてこれは笑い事で済ませられるものなのだろうか。……今のところ、その謎の化け物による被害は出ていないが、いつ何が起きるか分からない。

「………それともう一点…。………………死体が、忽然と消えてしまったという事件が…近頃増えております……」


ついでこれも、不可解な事件だった。


………葬式をするために一旦置いておいた死体が、本の数時間目を離した隙に無くなっていた…という怪奇事件だ。


獣が引き摺った跡も無いし、誰かに持ち去られた形跡も何も無い。死体だけがそっくりそのまま、無くなってしまった。




「………何か関連性があると思うかい?……大臣…」

「………分かりませんが……………その可能性は決してゼロでは無いと思われます…」