そんな事どうでもいいです。そんな事聞いておりません。問題はそこではありません。気付いて下さい。え、染み抜き?
何処から突っ込んでいいのかもう分からなくなってしまった哀れな召使。
慌てふためく彼女を置いて、クロエは梯子を探し続ける。
誰かこの人を止めて!!
心中で叫ぶ召使。そんな彼女に、不意に、救いの手が伸びた。
「―――……お父ぉ―様―」
何とも可愛らしい甲高い声。
幼い子供の声が階下から響き渡るや否や、クロエの意識はそっちに流れた。
普段からニコニコとしているクロエの顔に、更に笑顔が咲く。
階下の広間で自分の方に駆けて来るのは………まだ小さな、幼い少女だった。
淡い色のドレスに身を包んだ金髪の少女は、自分と同じ様に背景に花を散らしながらやって来る。
クロエは階下へ降り、しゃがんで、胸に飛び込んで来た少女を抱き抱えた。
高い高―いをすると、少女は愛らしい笑顔で「お父―様―」と呼んでくれた。
「…やあ、エルシア。何かな?………ピアノの稽古は終わったのかな?」
愛娘であるエルシアを抱き直し、その柔らかい金髪を撫でた。
「はい、終わりました。でもね、エルシアね、手が小さいから上手く弾けないの」
「そうか―…でも、すぐに大きくなるからね。………色々な曲を弾ける様になるよ」
「本当―?」
「ああ、本当だよ。上手くなったら、私にも、お母様にも……聞かせてやってくれ」


