亡國の孤城 『心の色』(外伝)



しかし、そんなクロエの優しい…人を引き寄せる人柄は、大臣や兵士、召使から民に至るまで好まれた。


………今の52世の横暴な人柄に比べれば、天と地、月とすっぽん、天使と悪魔と言える程だった。。

兵士の中には、恐れ多くも相談しに来る者もいるくらいだ。

しかしクロエはそれを撥ね付けたりせず、「何かな?」と微笑んで聞いてくれる。





優しくて、人懐っこくて、少し天然で………絵に描いた様な善人だった。






謁見の間からの帰りで気苦労に苛まれていたクロエだったが、こんな時でも、その妙な天然っぷりはきちんと発揮されていた。




「………………あそこのカーテンを取ってくれないかい?」

階段を昇っていた最中、クロエは不意に立ち止まり、やや高めの位置にある窓のカーテンを見上げて召使に言った。

ちょうど通り掛かった召使は、一瞬キョトンと惚けた顔でクロエと頭上のカーテンを交互に見やる。


「………畏まりました…………が、何故でしょうか?」

「………………端がほつれているから、縫い直そうと思って」

私が、という言葉が省略された何気無いクロエの発言。


……え?、と召使は思わず聞き直そうとした。

「……ほら、左端の方だよ。糸が垂れているだろう?せっかく見つけたんだ、縫い直そうか。………梯子は何処だったかな?」

と言って、どうやら本当にカーテンを自室にお持ち帰りする気満々らしいクロエは、梯子は無いかとキョロキョロと辺りを見回した。

「………ク、クロエ様!!その様な事でしたら私が致します故……!」

「大丈夫だよ。私は裁縫は染み抜きの次に得意なんだ」

アハハ、とクロエは微笑んだ。