亡國の孤城 『心の色』(外伝)










謁見の間から出る度に、精神的に酷く疲労している事に気付く。


あの重苦しい唸りを上げる巨大な扉は、越える度に寿命か何かを吸い取っているのではないかとたまに思う。



………この疲労の原因は分かってはいるのだが。



(………………どうも……陛下は………義父様は苦手だな……)

独り苦笑を浮かべながら、クロエは重い溜め息を吐いた。



………現在のフェンネル国の陛下。
クロエの義理の父にあたるフェンネル王52世は、ここ数年……やけに荒れた政治を行なっていた。


……荒れた、では軽過ぎる。
………残酷な、と言った方が正しい。


はっきり言って…悪政だった。それも稀に見ない最悪な…。




………いつから変わってしまったのだろうか。
52世は突然、創造神アレスの使者であり、忠実なる『魔の者』の虐殺を命じた。

一人残らず、無差別に………つい先月など、己の腹心までも血に染めたのだ。

おかげでこの緑の国には、魔の者の影さえ見当たらなければ、魔法の気配さえ空気に感じなくなった。




大臣も、民も、誰もが訳が分からなかった。


彼を変えてしまったのは何だったのか。

最愛なる王妃の死による心の病だったのか。

世継ぎが生まれなかった故の乱行だったのか。











それとも、これが本来の………彼の姿だったのか。


















ストレートの整った自分の髪を撫で、クロエはやはり溜め息を吐きながら広々とした廊下を歩き始めた。


廊下の端々に整列する兵士等は、クロエを見つけるや否や深々と頭を下げていく。