亡國の孤城 『心の色』(外伝)

アレクセイの言う通り、イブは初対面からずっと「ジンってなんか凄く良い匂いがする―、嗅がせろ―」とジンを追い掛け回している。

……その度にしがみつかれるため、ジンはイブがどうも苦手の様。



その、日常茶飯事の追い掛けっこの原因であるジンの『匂い』というのが………あの万年草こと、『カナリア』であるという。


………なるほど。確かに……あんなにも狂暴だったイブが、今は借りてきた猫の様に大人しい。

「………でもなんで、ジンに『カナリア』の花の匂いなんかが……」

「私とジンの故郷では、女は呪術士、男は猛獣使いの戦士として育てられるのですが………猛獣使いとは、どんな獣でも従わせる術を身に付けなければなりません。そこで、生まれた時から飲み水、食べ物などに必ず入れて、万年草の香りが染み込んだ液を体内に取り込むのです。………すると、体臭や口臭が自然と万年草の香りを含む様になります。ジンはまだ里を出て一年足らずですからな。万年草の匂いはまだ濃いでしょう」













…………つまり。




…つまりは…。

















「………最初からジンを見付けていれば、対処は早かった…」

「そういう事ですな」






アレクセイに続いてゾロゾロと集まってきていた兵士等も、どうにか鎮まったイブを見ながら、深い深い溜め息を吐いた。





リストは踵を返し、フラフラとした足取りで地下室の出入り口へ向かった。







「………………ジン………後は……よろしく頼む。………今日の日暮れまではそのままでいてくれ…………」

力無く、ヒラヒラと手を振るリストに、ジンは慌てた。