ジンの目の前で立ち止まった彼女は、クンクン、クンクン、クンクン……と、ジンの匂いを嗅ぎに嗅ぎまくる。
………ジン自身も何が起こったのか分からず、眉をひそめて目の前の彼女を見下ろしていた。
そのまましばらくジンの匂いを嗅いでいたイブは、何故か幸せそうな惚けた表情を浮かべ、あろう事か………………………………正面からジンに抱き付いた。
勢いよく背中に両腕を回されて抱き付かれたジンは、バランスを崩してそのまま床に尻をついた。
…………えー…?
………とりあえず、トボトボと二人に歩み寄るリスト。
イブは甘える猫の様にニャーニャー鳴きながらうっとりとした表情で、ジンの胸板にグリグリと顔を擦り付けたり、首筋をクンクン嗅いでいる。
………もう、されるがままのジンは………………………………………有り得ない程、真っ赤だった。
…硬直し、カタカタと震えている。
………一体、何がどう…。
「―――あ。思い出しましたぞ」
何とも言えない空気が漂う中。
空気が読めず、壊す事しか出来ない老紳士の間抜けな声が、地下室に響き渡った。
………いつからそこにいたのか。
リストの真後ろに、アレクセイが佇んでいた。
「………ジジイ…」というジンの呟きを無視し、アレクセイは勝手にペラペラと話し始めた。
「イブ様は日頃、『良い匂いがする―』と言ってジンを追い掛け回しておりますでしょう?…その良い匂いこそ……『カナリア』の花の香りです」


