ようやく戦闘体勢に入ったらしいジンだが、構えもしなければピクリとも動かない。
その間、イブはどんどん距離を詰めてくる。
「おいジン!!何ぼーっとしてやがる!!」
「……………………………私には、出来ません。………………鞭を振るうなど…」
「お前俺には散々振ってくるくせに!!意味分かんねぇよ!!食われるって言ってんだろ!?」
「私一人が犠牲となって済み、且つ彼女が無事ならば………………………………………………………本望」
何言ってんのこの人!?
……もうこのジンとかいう男の頭にはついて行けない。
リストは舌打ちし、丸太の上から飛び下り、一本しかない短剣を構えた。
しかし、ジンの腕がリストを制する。
「………………手出し無用。終いにするのは私の役目と見た。………サベス、貴方は逃げよ」
「何言って…………おわっ!?」
目にも止まらぬ速さでジンの鞭が胴体に巻き付き、リストは投げ飛ばされた。
高々と飛ばされながら、リストは、イブがジンに衝突しようとしているのが見えた。
あの鋭い牙が、自らを犠牲にするジンの首に………深々と。
「―――…ジン!!」
…………が。
リストの視界には、予想していたジンの憐れな姿も無ければ、舞い散る血飛沫も、無かった。
着地したリストは………………呆然と、その光景を眺めていた。
………イブは、ジンに噛み付くどころか、今さっきまでの荒々しさも感じさせぬ程大人しくなっていた。


