双方のだんまりを決め込んだ睨み合いは、長くは続かなかった。
先に飛び掛かって来たのはイブ。
充分に取った間合いを一気に詰め、鋭利な牙が並ぶ狂暴な口をパックリと開いてきた。
……よく見たら舌はいつもより長いし牙も鋭さが増しているではないか。
フェーラのより狂暴になった姿は…悍ましい。………特に情欲に飢えたこんな雌は。
リストは身体を捻ってその突進を避けたが、間を空けずにイブは更に飛び掛かってきた。
反応速度も速い。全身がバネの様ですぐさま跳躍が出来る様だ。
避けても避けても、視線を戻せば目の前まで迫っている。
………厄介だ。
「………チッ…」
頭を丸ごと飲み込んでしまいそうな勢いで目の前に迫ってきた、裂けた口。
後退しようとしたが、間に合わない。
咄嗟に後ろには引かず上へ跳躍した。
宙でクルリと身体を捻り、目下を通り過ぎて行くイブの背中を台代わりに両手を付き、両腕の力のみで更に跳躍した。
イブとは反対側の方へ着地し、すぐさま身構えた。
………なんだか徐々に息が荒くなっているイブ。吐息の赤色も、濃ゆくなっている。
ブルブルッと身体を大きく震わせると、イブは「シャアアアア!!」と咆哮し、リスト目掛けて大きな弧を描く様に跳躍し、飛び掛かって来た。
「目を覚ましやがれ馬鹿娘!!」
苛立った声で叫ぶと、突っ込んでくるイブに向かって、リストは蹴りを放った。
勢いよく放たれた蹴りは、彼女の腹部に命中。深くめり込んだかと思うと、イブの華奢な身体はそのまま吹っ飛ばされた。
ビュンッ!と兵士等の間を抜け、イブの身体は柱に叩き付けられた。


