亡國の孤城 『心の色』(外伝)




リストはモンスターイブを睨んだままその場で軍服のベストを脱ぎ、傍らの兵士に投げてよこした。

腰のベルトに常時差し込んである愛用の二本の短剣を、無言で抜いた。



「………………命をかけた勝負は久し振りだな……。………ハンデは無しだ……………かかってきやがれ…!」





………これは昨日、一昨日の様な下らない喧嘩とは違う。

………本気だ。マジだ。………お二方とも、目が血走っている…。


「…や………止めて下さいリスト様!?そんな物騒な…………うわああああ!?」

彼の前に出て止めに入ろうとした途端、イブが頭上から音も無く現れ、リストと兵士の前に着地した。


ジリジリと後退する兵士に反し、リストは挑む様に一歩、前に出た。


「手出し無用。………誰も邪魔するなよ。………トゥラ、お前は何処かに行ってろ……………怪我するぜ…」

広間の隅で大人しく座っていたトゥラは、リストを一瞬睨んだ後、暗がりに飛び込み、“闇溶け”で姿を眩ました。







互いに視線を重ねたまま、外そうとしないリストとモンスターイブ。

イブは低い体勢のまま少しずつ間合いを取っていく。




………理性などもはや無く、本能のまま動いているだけかと思っていたが………戦闘の術は身体に染み付いているのだろう。
間合いのとり方や注意力は戦士そのものだ。

形の良い唇は微かに笑みを浮かべ、血走った黄金色の三つの瞳はしっかりとリストを映している。



………赤い吐息がさっきよりも浅い。

リストという格別な獲物を見付けて興奮している様だった。