亡國の孤城 『心の色』(外伝)

















「―――…何か用?イブ」



















扉に追突…するかに思えた途端、室内からポツリと聞こえてきた声。
ギギギィッ!と、イブは扉の前で急ブレーキをかけて、何故かピタリと静止した。


………そして急に大人しくなったかと思うと…目と鼻の先の扉を、じっと見詰める。


…魔王の小さな声がまた、聞こえてくる。
















「―――…何?」

















………何故か、無表情のイブ。………かたかたと震えている様に見えるのは気のせいだろうか。





















「―――……………………………だから………………何?」


























………その途端、イブは急に踵を返してダリルの部屋から一目散に走り去った。

まるで、逃げる様に。









「イブ様!?」

「ええっ!?何これ!?」

猛スピードで再び大広間へ向かうイブを、兵士達は訳が分からないままとりあえず追い掛けた。


何なんだあのイブ様の怯え様は…。











本能のまま荒れ狂う獣の気性さえも畏縮させてしまう魔王ダリルの底力に、改めて恐怖を感じた。
















騒音の根源が去って行った執務機関。

執務官達は何事も無かったかの様に業務に取り掛かる。
ダリルも、何食わぬ顔で羽根ペンを掴み直した。











「扉、歪んでるね。………修理費は、軍事費から引いておいて」

「畏まりました」