間髪入れずイブは一瞬で次の獲物に三つの焦点を定め、その必死な背中に向かって走り出す。
「お前狙われてるぞ!!」
「そっちの部屋は閉めてある!!隣りだ隣り!!」
言われるがまま兵士は身体を捻って方向転換しようとした………途端。
向きを変えた兵士の目の前に、追いついてしまったイブが立ちはだかった。
間合いだとか……そんな距離も無いくらい近い。
サッと青ざめながら兵士は踵を返そうと後ろに向き直ったが、イブの長い尻尾が行く手を阻む様に、真横の壁に突き刺さった。
………ああ、やばい。
………ああ、あいつやばい。
「剣抜け!!剣!!」…という声が聞こえてきたが、もはや兵士には剣を抜く暇も無かった。
鼻にツンとくる熱い吐息と、余韻を残す不気味な掠れ声。舌なめずりの何とも気味の悪い水音。
………ハアハア…という荒い息と共にそれらが首筋にかかってくる。
………ああ、美女に迫られているのに、何故こんなにも悪寒が背筋を走るのだろう。
ニイッ…と妖しく微笑んだ彼女の形のいい唇は耳近くまで裂け、兵士の首目掛けて口を開いた。
とうとう犠牲者が…!
誰もがそう思いながら見詰めていたが……齧り付こうとしたイブの身体が突如、何処からともなく現われた黒い影によって体当たりされた。
イブは空中でクルクルと回転して、すぐさま四本足で床に着地し、いいところで自分をどついてきた相手にフーッ!!と威嚇した。
何が起こったのか分からずにいる兵士。
そんな彼を助けた黒い影は………トゥラだった。


