もう我々に残された道は、耐え忍び、逃げ惑う道しかない。
上司のリストに注がれる戦士達のまなざしに、異は、無かった。
「武器の使用は許可する」
「………い、良いのですか…?」
モンスターことイブは、仮にも自分達の上司だ。
…その上司に刃を向けるなど…。
「別に良いよ。俺が許可する」
「………リスト様、私怨は無しですよ…」
日頃の溜まりに溜まった恨みつらみを今この時……!、と考えているに違いないリストに兵士達は呆れ顔で溜め息を吐くが、身を守るためという事で渋々了承した。
「…三階より上には行かせない様に。状況は?」
「螺旋階段の途中途中に、臨時で槍の柵を設置しています。それに一階の大広間か二階にしか兵士はいませんので、三階より上に移動する事はないかと…」
「シャアアアア!!」
「ぎゃあああ!?」
重力やら平衡感覚を無視して広間の柱にへばり付き、手の甲を舐めていたイブ。
首を振って乱れた髪を後ろに追いやるや否や、不意打ちとばかりに周囲でジリジリと間合いを取っていた兵士達に突進した。
死に物狂いで逃げ惑う沢山の背中の内、一番近い兵士に標準を絞り、イブはスピードを上げた。
…ダンッ、と大理石の床を蹴って跳躍し、狙った獲物の背後に近寄ると、襟元から覗いた筋肉質な首筋に向かって口を開いた。
逆三角形の鋭利な歯が並ぶ口。
開閉する度に、赤色を帯びた粘着質な唾液が糸を引く。
………それらの牙が食い込むという直前、惜しくも獲物はその場で前転し、血祭りになる事を免れた。
…チッ、と舌打ちするイブ。


