「ま、いっか」
「………何か言ったかアレクセイ?」
「いえ、何でも御座いません」
早々に諦め、アレクセイは爽やかな笑みで答えた。
ま、いつか思い出すだろう。本当に知っていたら。
「うあああああ…とにかく!俺はやっぱり陛下に頼るべきだと思います!!」
「そうだ!!俺達にはもう陛下しかいない!!陛下しかいないんだ!!」
「やっぱり陛下は最強だ!!最強なんだ!!アレクセイ様!!陛下は今どちらに!!」
「昨夜から、ルウナ様と首都に行かれてお出でです。祭日にだけある民衆劇を見に行かれてます。お帰りになるのは遅いかと」
「「「「「あ゛あああああああああああああああぁぁぁぁぁ―――!!」」」」」
「―――……?」
「どーしたの、お母ぁ様?」
民衆劇……いわゆる、貴族ではなく一般市民を対象とした、観賞料が安価な劇だ。
臨時に作られた素っ気無い舞台の上で、無名の劇場作家が作る新しい劇。
観賞料は、舞台の前の立ち見場が一番安く、その後ろにある階段状に設置された座席では、上に行けば行く程高くなるのだ。
貴族などいない今、それらの座席は殆ど一般市民で埋め尽くされていたが、今日はその真ん中辺りに…………………あろう事か、女王陛下と第1王子が座っている。
このフェンネル王54世こと、ローアン陛下の国民からの支持は物凄いもので、見掛ければ皆集まってくるし、握手を求め、深々とお辞儀をしてくるのだった。
その女王陛下と王子の突然の来訪に、民衆は歓声を上げて迎い入れた。


