亡國の孤城 『心の色』(外伝)



埃塗れの分厚い書物を脇に抱えたアレクセイが、極普通に室内に入ってきた。

あちこちで乱舞する兵士達に顔をしかめつつ、アレクセイはリストの前に歩み寄り………ドサッ、と書物を放り投げた。

「………何だよこれ」

「……表紙を見れば分かって頂けるかと…」


こんな時に何なんだ…とリストは渋々しゃがみ、少し訝しげな顔で書物の表紙に目をやった。


……埃やら汚れやらでよく見えなかったが………そこには確かに…。

















「………『動物百科辞典(生態編Ⅲ)』…」




―――………え?…と、我に返った周囲の兵士達は一瞬呆然とし、すぐさま全員、ぐるりと百科辞典を囲んだ。
「……動物百科……!?」

「そんなものがあったのか!………城に…」

目を丸くして覗き込む兵士達を見下ろしながら、アレクセイは百科辞典を指差した。

「……フェーラについての詳細が、事細かく記されておりました故、お持ちしました。………多分、今回のイブ様の変貌振りも……大体理解出来るかと思います。………栞挟んでますよ」



栞、栞、栞―!……等と喚き散らす中、リストは溜め息を吐きながら黄ばんだ頁を捲っていった。

そして羽根ペンに似た栞が挟まっている頁に辿り着くと、半ば面倒臭そうにリストは声に出して読み始めた。














「………野獣フェーラは、フェンネルにのみ生息する動物である。…生息域は本来デイファレトにも及んでいたが、急激な気候変動によりその殆どがフェンネルへと移った。巣は主に火山地帯、渓谷。群れを作る事は無く、生まれた時から常に単独行動…」

「リスト様、もうちょい下の方読みましょうよ………出だし読んでも…」