亡國の孤城 『心の色』(外伝)

慎重に、物陰から物陰へ素早く移りながら迅速に行動せねば。

………相手はあのイブだ。この隠れんぼもそう長くは続かない。いや、続けられない。臭いを嗅くだけで、彼女には獲物の数、位置、距離という重要な情報をいとも容易く手に入れられるのだから…。



最後の望みとして陛下を頼る………事に、勿論賛同したかったが………リストは腕を組み、眉間にしわを寄せた。


「………え……どうしましたか、リスト様……何か問題でも…?」

怪訝な表情を浮かべる兵士達。そんな彼等の前で、リストは首を傾げた。

「いや………な…。…………………………………陛下……今日は一度もまだ見てないな―…って思って……」

「………」








そう言えば………まだ今日は見ていない。

………いくら早朝だからと言っても、集会の時は必ずいるのだが……………今日は……まだ…。










………何だか、嫌な予感がする。

その場にいる全員が、やや俯いて口を閉ざしてしまった。


























――その途端、資料室の扉がバーンと勢いよく開け放たれた。



「ギャアアアアアアアアアアアアアアア―!?」


突如、暗い室内に外界の光が差し込み、部屋中央で輪になっていたリスト達の姿がさらけ出された。

兵士等は条件反射的に剣を握ったが、パニックと化した頭は剣を鞘から抜く事も放棄させ、リスト以外の全員が鞘に納まったままの剣をしきりにブンブン振り回していた。



リストだけは体勢を低くし、身構えたが………すぐに構えを解いた。



「………アレクセイ……か…」

「……アレクセイですが…」