改めて、彼女が獰猛な野獣フェーラである事を認識する一同。
フェーラはこのフェンネルに生息する、極めて危険な獣である。
食欲旺盛で、家畜から人間まで見境無く襲ってくる。
独特の魔術も使える厄介な獣でもあるし、人に化けれるし……。
………そんな恐ろしいフェーラでありながら、人間には好意的で、人間の言葉を使いこなして、普通の女の子と変わらない……普通に人間として生活しているイブ。
……よく考えてみれば、案外イブは凄い子なのかもしれない。
イブに人間のルールを教え、兵士として育て上げた陛下も…凄い。
「………イブ様…昔からやんちゃで悪戯好きで…手が付けられなかったが。……いつもニコニコしててな………根は、良い子なんだよな…」
二年前までは、国家騎士団の敵の、反国家勢力『アレスの使者』の者だった兵士の一人が、昔を思い出しながらしみじみと言った。
革命派だった頃のイブやダリル、そして女王陛下を見てきた者は多い。
今は皆、同じ志を持った同士だ。
「……あ…そうだ。……陛下なら……陛下なら知っているかもしれない……。陛下はイブ様の保護者みたいなものだし…!」
「そうか!……でも、どうだろうな………イブ様があんな風になった事なんて今の今まで一度も無いぜ…?」
「……希望はある!他にあてなんて無いだろう?……訊かないよりはマシだ。………リスト様、そうしましょう!」
絶体絶命のこの窮地に、一筋の光を見出した。
ここはもう陛下しかない。
どうにかして陛下の元に辿り着き、すがってみるしかない。
この天気の良い真っ昼間だ。……“闇溶け”しようにも闇が足りない。


