捨て駒の様に扱った俺を許してくれ、アレクセイ。
いや、実際捨て駒にしてしまったが。
よかったら、足止めして下さい。
後で何か奢るから…。
感きわまって溢れる涙を拭い、リストはアレクセイを見捨てて資料室に繋る奥の扉を蹴り開けた。
………はて、もしかすると私は、飢えを満たすために放り投げられた餌代わり…?
状況は把握出来ないが、とにかく見捨てられたのだな…とぼんやり理解するアレクセイ。
そして改めて広間中央を見やると………手の甲を舐めながら辺りに鼻を利かせているモン…イブ。
途端、弾かれた様に尾を立て、爛々と光る三つの目をこちらに向けてきた。
「………イブ……どうしましたか…?」
………目の前にいるのはイブなのだが、明らかにいつもの彼女ではない。
何というか………野生返りをしてしまっている。
本能に捕われた彼女の瞳には理性など微塵も無く、アレクセイを頭の天辺から爪先まで舐める様に見てくる。
………そしてイブは床を蹴り、四足歩行でアレクセイに向かってきた。
…何となく危機を感じたアレクセイは、ゆっくりと腰のベルトに手を伸ばす。
………護身用のナイフ…を取ろうとしたが、そう言えばさっき掃除中に邪魔だな、と思って取り外していた。
よってナイフは無い。
…仕方無いので、アレクセイはナイフの代わりに埃が付着したハタキを掴んだ。
イブはスピードを緩める事無く、こちらにまっすぐ走ってくる。
………ああ、来るかな……と身構えていたアレクセイだったが…。
………ある事に気付き、アレクセイはあっさりと構えを解いてしまった。


