亡國の孤城 『心の色』(外伝)





飛び下りたリストは軽い身のこなしで着地し、一階の大広間を横断する。

太い柱の後ろに隠れているらしい兵士数人が、必死で息を潜めているのが見えた。







その時…。



















「おや、リスト様…集会は終えたのですか?………そこの者、何故そんな所に隠れているのですか…」

一階の奥から現われた、この切羽詰まった事態を知らないアレクセイ。
すぐ脇の扉の後ろで振るえながら縮こまっている兵士を見ながら、彼は顔をしかめた。


リストはすぐさま駆け寄り、いつでも姿勢を正しているこの老紳士の前で静止した。

「………とにかく、異常事態って事だけ言っておく。アレクセイ……よく分からないがお前も逃げた方が…」

「………逃げる?………はて、何からですかな?」

「だからあの…」



モンスターから…と言い掛けた時、大広間中央から大轟音と粉塵が散った。








………やっぱりまだ何がなんだか分かっていない、無表情のアレクセイの視線と、サッと青ざめるリストの視線が向かった先には………………広間中央で這いつくばった姿勢で構えるイブ。

ゆっくりと顔を上げ、頭をブンブンと四方八方に振って髪を後ろに追いやる。
第三の黄金色を帯びた瞳がはっきりと現われたその顔は…興奮しているのか、さっきよりも赤らみ、粘着質な唾液が絡み付くその長い舌で牙を舐め回している。

彼女の真下の床はやや陥没していて、広範囲に渡って亀裂が生じていた。





修理かな…とアレクセイは嫌な顔を一瞬浮かべた。





「すまん。俺は、逃げる」

「………はぁ。……お気を付けて…」

言うや否や、リストは猛ダッシュした。