亡國の孤城 『心の色』(外伝)





「………何泣いてんだお前…」

両手で顔を覆って無言で泣き始める師団長を前に、リストは冷静に言った。


くぐもった声で、「…………あ………俺、生きてる…」と呟いているのが聞こえる。

………イブを起こしに行って、何故こんな駄目な子になって帰ってきたのか。

全く状況が掴めないが、とにかく気休めにはなるだろうと彼の肩を叩き、リストは真剣な面持ちで口を開いた。





「………で?………何があったんだ?………あの馬鹿に何かされ…」

「そうです!!特務師団長がぁ!!イブ様が!!……………………………イブ様が………えらい事に…!!」

ワッ、とまた泣き出す師団長だったが、肩を振るわせながらも身の上に降り懸かって災難を説明し続けた。




「……………よ、様子が明らかにおかしくて………ああ、閉めよう、そして逃げようって思って扉を閉めようとしたら……………………隙間から…う、腕を掴まれて………室内に引き摺り込まれそうになって………!!………あああ………その辺はよく覚えていません!………無我夢中だったので……………………とにかく……なんか、俺………イブ様に食われそう……だった…」




あああああああ!、としゃがみ込んでしまった師団長を見下ろしながら、全員、顔を見合わせた。






「………………よーし、第1師団長。お前、じゃじゃ馬女を起こしに行ってこい」

「リスト様、今の話を聞いて誰が行きますか」





よく分からない。


よく分からないが………とりあえず皆、行きたくない。

それは全員、万国、全人類共通の意思である。





「………起こしに行かないと休暇無しだぞ…」

「もうそれ、こだわらなくても…」