何か引っ掛かっている様だ。
暗闇に目を凝らして下を見ると………………………椅子?
何故か横倒しになっている椅子が、扉の前を塞いでいた。
しかもこの椅子………脚が折れている。
(………な、何だ…?)
よく見ると………破損しているのは椅子だけではなかった。
ピクリとも動かないカーテンのレースは斜めに裂け、天井のシャンデリアは大きく傾き、壁紙はあちこちが剥れている。
羊皮紙やらペンやらインクやら、全部床にぶちまけられており、高価な絨毯は見るも無残な姿と化していた。
この部屋で戦争でもあったのだろうか。
………いや、とにかく……イブ様は…。
もっと室内の状況を把握するため、これ以上開かない扉を強引に押し続けた。
………その時。
………………視界の隅で、何か……………動いた。
人影…?
微かに動くそれに視線を向けた。
暗い室内でぼんやりと浮かぶシルエット。
それは突然跳躍し、傾いたシャンデリアにぶら下がった。
揺れるシャンデリア。
それにぶら下がる影。
…だらりと、夕日に似たオレンジ色の長いポニーテールがシャンデリアから垂れた。
瞬間、師団長はその影がイブであると理解した。
「特務師団長!………どうなされたんですかこの部屋の有様は!………何があったのか知りませんが、とにかく降りて来て下さい」
驚かせないで下さいよ―、と笑みを浮かべる師団長だったが…………ぶら下がる彼女からは返答が無い。


