亡國の孤城 『心の色』(外伝)



本来、兵士等の部屋はこの城ではなく、丘の下層部分にある貴族の城か塔である。

が、総団長や他幹部はこちらの王族の城に部屋がある。

イブの部屋は螺旋階段を昇って三階。奥にある広い部屋だ。


第2師団長は重い足取りで階段を上がり、薄暗がりの廊下を進み………奥にある彼女の部屋の前に辿り着いた。


師団長は装飾が施された品の良い扉に軽くノックをした。







「特務師団長、もう朝ですよ。集会が始まっております。特務師団長、朝です」

何度か繰り返し、ノックとその台詞を扉に向けて放ったが………………返事が、無い。






……おかしい。

最高でも五回これを繰り返せば、中から、ベッドから落ちる音が聞こえて来る筈なのだが。
………無音、だ。





「………………特務師団長…?………イブ様―……」






………ここまで静かなのも、おかしいを通り越して何だか不気味だ。
本当にこの室内にいるのかも怪しい。

「………朝ですよ―………いらっしゃるんですか―…?」



何気無く手を掛けたドアノブ。ノックを繰り返しながら回してみると………ガチャリ、と音を立てて扉が開いた。



………………。


「………イブ様―…?」








警戒心の強いフェーラでありながら爆睡か。それともやはりいないのか。

不思議に思いながら師団長は扉をゆっくりと開けた。
拳一つ入るくらいの隙間から、そっと室内の様子を窺う。











………中は真っ暗だった。

朝日が差し込む筈の窓は厚いカーテンが掛かったままで、ランプの火も灯されていない。



(………ん?)

扉を更に開けようと押してみたが…それ以上開かなかった。