丘の上に一瞬、突風が吹き渡った。
乱れる髪を押さえながら、永遠と続く大地の壮大な景色を見詰めて、リネットは………。
流れ行く風に、乾ききった花を………………………離した。
歌を歌う突風は、干涸びた花をすくい取り、そのまま……広い大地へと持っていってしまった。
優しい、甘い匂いをちらつかせ、風と交わって…。
脆かった花は、風にのまれながら………次第に崩れていった。
色褪せた赤い花びらが、彼方へと舞っていく。
行く宛も無く、匂い立ちながら。
まるで、春そのものの様に。
遠くへ。
決して追いつけない、手の届かない、遥か遠くの、そのまた遠くへ。
―――殿方は嫌い。
――大嫌い。
傲慢で。
馬鹿で。
短気で。
思い込みが激しくて。
―――………せっかちなんだもの。
終