パチン、と扇子を開き口元を隠して、眉をひそめたアベルを見据えた。
「………………チェスの罰ゲームは………あれは本当に罰ゲームとして提案したものかしら?………それとも………故意に……?」
まだ未だに実感がわかないが……仮に本当にアベルが自分に……友情だとかを越えた、そんな感情を抱いているのだとすれば………………自分は屈辱だと思って臨んだのに、彼にとっては勝っても負けてもどちらにしろ損は無い事に……。
フェアじゃない。
フェアでない賭け事は、賭け事とは言わない。
もし故意に提案したのだとすれば、彼はなんてずるいのかしら……。
「………チェスの勝負は………本気だったさ…」
………その途端、アベルは妙に真剣な顔を向けてきた。
自分とよく似た鋭さを持つ眼光が、久方振りに交わった。
「………勝負は勝負。罰ゲームは罰ゲームで、俺は挑んだつもりだ。………最初から………今まで……」
「………」
「………この間も言ったな…。……………得る勝利ってのは……本気の勝負じゃないと意味が無い。………本気のお前じゃないと、意味が無いって……言った…筈だ」
意味が無いんだ。
勝負も。
賭け事も。
何でも。
「………罰ゲームなんかで、本気になって言うつもりは一切無えよ………それとこれとは別だ…」
「………」
「………………最初は……罰ゲームだろうが何だろうが……お前に言うつもりなんてさらさら無かったさ……」


