妙に冷めた自分の中にはそれとは別に、彼にどう接しようか…と悩む自分もいる。
彼について、色々と知ってしまったのだ。
この間までの様には、いかない。
アベル少年の方も、はたしてどんな顔で面と向かってくれるのやら。
彼と会うことに抵抗がある反面、少し楽しみにも思える。
………ぼんやりとそんな事を考え、手を口に添えて上品に欠伸を噛み殺していると………不意に、アベルが視線を彷徨わせ、何気なく………螺旋階段が伸びる天井を見上げてきた。
………必然的に、階下を見下ろすリネットの姿は彼の視界に入り込み、あっという間に、………互いの視線が重なった。
バチッ…と音がしそうな、視線の交差。
自分を凝視しているのがリネットであると理解するや否や………………………バツが悪そうに、慌てて視線を逸らした。
「―――……あら、すぐに帰られるの?では、今日はチェスはしないのね」
「………ああ」
今日アベルが入城したのは、チェスではなく、先日、誕生日を迎えたローアンへの挨拶を述べに来た故、らしい。
盛大に行なわれたローアンの誕生日パーティでは、残念ながら、用あってコール家は行けなかったのだ。
そのため祝辞だけでもと思い、数日経った今日、親子揃って入城したのだった。
堅苦しい挨拶に真っ赤な花の簡素な花束を添えて。
しかし当のアベルは我関せずと言わんばかりに、握った花束を無造作に振り回している。


