亡國の孤城 『心の色』(外伝)













そろそろ、陽光が差し込む大地も肌寒くなる時期に入っていた。


これから来るであろう短い冬季は、すぐに終わるが……その訪れもすぐだ。


きっと二、三日後には、吐く息もうっすらと白くなっている事だろう。






今年の冬は、雪が沢山積もるかしら。

お転婆なローアンの様に、外に出るのはあまり好きではないけれど……雪景色に足を踏み入れたいというちょっとした好奇心ならある。



丘の上に建つこの城の窓から見た銀世界は、それはそれはもう言葉に出来ないくらい美しい、絵に描いたような世界なのだ。


雪に覆われた大地は純白の絨毯を敷き詰めている様で、その滑らかな表面に飛び込みたくなる程だ。





今はまだ春季の、緑がちりばめられた風景しか無いけれど。











リネットは廊下の壁に均等に並んだ窓の一つから、ぼんやりと外を眺めていた。


だが、階下から聞こえてくる話し声が止んだ途端、リネットは視線を外し、階段の縁にもたれ掛かって階下を見下ろした。


いつにも増して鋭いリネットの眼光は階下の広間へと注がれ、その瞳は数人の人影を映した。





広間の中央には、頭を深々と下げる大臣。その正面に立ち、堅苦しい挨拶を言い終えたらしいコール家当主。

その隣りに立つのが………。








………さて、問題のアベル少年だ。




頬杖を突いてじっと彼を見下ろすリネットは、無表情だった。

チェスの戦い前は、アドレナリンが回って意気揚々とする筈なのだが………今日はなんだか、何の感情もわき起こってこない。