「………そのアベル様が……姫様とのチェスには、必ず……行くと言ったら行く……と、来られるのですよ。………月に一度くらい…お忙しい中、無理矢理時間を作っていらっしゃるとか…」
「………」
どうりで、チェスをしている時………チラチラと時計を見ている訳だ。
忙しいの?…と聞いても、不機嫌な顔で「うるせぇ」としか言わないアベル。
なんだ……やっぱり…忙しかったんじゃない。
チェスをしに来たその日だけは、常にスケジュールが狂いっ放しだったのでは……。
「近頃ではよく話されますし……持病の方も殆ど完治している様ですよ。………そのせいか、姫様への求婚者の話をよく訊かれます。………………姫様はその殿方等全員をフったか………その中の誰にも惹かれていないか………等々。……フフッ…可愛らしい方ですよ本当に…」
思いだし笑いをしながら、召使は楽しそうに話す。
一言も逃さず、ただただぼんやりとして聞いているリネットは………無表情だった。
………だんだんと剥れていく、彼の仮面。
外と中のあまりの違いに、リネットは内心酷く驚いていた。
………あんなに嫌そうだったのに。
……あんなに無愛想だったのに。
………あんなに……嫌いだと………言っていたのに。
そう………そうね………………私は………。
(………上っ面しか……………………見ていないのね)
無意識で。
当然とばかりに。


