それはもう…突然の変わり振りだったそうだ。
人に物を投げなくなった。
身なりもきちんとしだした。
籠りきりだった部屋から出て来る様になった。
ガンつけてくる事が無くなった。
………とにかく、目もあてられなかった問題児の中の問題児が……本当に変わったらしい。
「……呼んだら……目を合わせてくれる様になったわ…!!」と、彼の母親は嬉しさのあまり号泣していたらしい。
というか、そんなに酷い問題児だったのか。アベルよ。
「………今でもまだ外出を拒んでいらっしゃるらしいですがね…」
「………何故彼はそんなに荒れていたのかしら?………過保護な親のせい?」
それなりに背景がある筈だ。
そこまで彼を荒れさせたのは一体何だったのか。
………そこで召使は何故か口を閉ざしてしまった。
奇妙な数秒の間を置いて、彼女は重そうな口を開いた。
「………重い持病故に…でしょう。………生まれた時からアベル様は既に重病を抱えておいでで………いつ死んでもおかしくないと言われていたそうです。………2歳になるまで生きているか………3歳になるまで生きているか………」
4歳………5歳………10……11歳………。
毎日毎日、病の苦しみと死と、隣り合わせ。
余命を宣告され続ける毎日。
しかし、それでも訪れない死。
まだか。まだか。
まだなのか。
いつになったら、俺は死ぬんだ。
当たった試しが無い余命宣告をされ……怯えながら……また、宣告された日が経っていく。
生殺しだった。


