私の家の前に着くと、奏斗さんは微笑んで私に言った。

「また来いよ、いつでも待ってる」

「はいっ」

手を振って奏斗さんを見送る。

その背中を見ながら、私は考えていた。


‥‥奏斗さんを好きになった方が、楽なんじゃないだろうか。

幼い頃の思い出を忘れて、新しい恋に踏み出すのは、悪いことなのかな‥‥?

最近明らかに私を避けている忍君に、私はすっかり落ち込んでいた。

どうして忍君が私を避けるのかが、全くわからない。

苦しいよ‥‥。



この時の私は、忍君の思いも、奏斗さんの思いも、そして自分の思いにもまだ気づいていなかった。


そして、それが原因で、あんな事になるなんて‥‥今は、まだ。