2人が出て行った扉を呆然と眺める。



理央奈を攫っていった忍は、まるで童話に出てくる王子のようだった。



「奏斗さん・・・」



幹部の奴らが心配そうに俺を覗き込んでくる。




「なぁ・・・さっき忍さ、たとえガキの頃から慕っていた奏斗さんでも、って言わなかったか?」



「え?言いましたね・・・」




「・・・ははは!!」



急に笑い出した俺に、どうすればいいかわからず戸惑う幹部の奴ら。




「忍のやつ・・・思い出したんじゃんか」



俺とのガキの頃の記憶をなくした忍が、思い出した。



忍は、自分の過去に蹴りをつけて理央奈を攫っていったのだろう。




「そんなの・・・適うはずねぇわな」



俺は、泣きながら笑った。




喜びと、悲しみと・・・複雑な気分で、泣きながら笑った。



「幸せにな・・・」