私の顔に総長らしき人の拳が当たる、まさに直前。


その手を掴んで止めてくれたのは、


「奏斗さん……」


だった。


「理央奈ちゃん、こっち!!」


「っ、忍君?!」


呆然と奏斗さんを見ていた私の腕を掴んで引っ張ったのは、忍君だった。


「理央奈ちゃん、平気?怪我はない?」



心配そうな顔で私の体を確認する忍君。


「…うん、大丈夫だよ」


どうして私、奏斗さんを選んだ方が楽かもなんて、一瞬でも思ってしまったんだろう。


たとえどんなに辛くても、私はやっぱり忍君が好きだ……。


「私は大丈夫だから。心配しないで」


ニッコリと笑ってそう言うと、忍君は目を見開いて私を見た。


「大丈夫…だから、心配しない
で……?」


「……忍君?!」


忍君は私の言葉を繰り返すと、突然頭を抑えて倒れ込んでしまった。


「忍君?!忍君!!」


私と忍君を見て焦った奏斗さんが、一撃で総長らしき人を倒すとケータイで救急車を呼んでくれた。


「おい、どうしたんだよ忍!!しっかりしろ!!」


「忍君!!」



私と奏斗さんの忍君を呼ぶ声だけが、部屋中に響きわたっていた。