愛する人。





 彼の腕の中。いつもは安心するのに、今日は不安で胸が苦しい。


 お母さんの涙、私を抱きしめる彼の腕の強さが、こんなにも不安にさせる。



 私の心の震えに気付いてるのか、彼が語りかける。




「ねぇ、優子。

 人は死んだらどこに行くと思う?」




 見上げた彼の顔はいつもの、儚げな笑み。



「ふふっ 歌にもあるけど墓には……居ないよな」


 私の手をしっかり握り締め、彼は私に言う。



「……空、かな…」