愛する人。








 ――この部屋じゃない。


 ――この部屋じゃない…!






 足音は、部屋の前で止まった。




 扉がゆっくり開くと、彼と彼に支えられたお母さんが入ってきた。


 彼が私に気づき、微笑んだ。



「ごめん。待たせちゃったね」



 私は、うまく笑えてるかな…?



 その声に気づきお母さんも私を見て


「優ちゃん! あらやだっ待たせちゃってごめんねぇ〜」


 真っ赤な目に、真っ赤な鼻。
 努めて明るい声を出すお母さんに、私も微笑んだ。