愛する人。





 彼は心臓の病気で今の医学では完治は難しく……長くはない。



 入院したのは私達が二十歳の時。


 もともと体の弱かった彼が倒れてそのまま入院。

 学生のころからの付き合いで、今更彼がいない日常なんて考えられない。
 仕事が終わるとほぼ毎日彼に会いに行くのが私の日課。


 今日は早く終わりそうだから、起きてる姿見れるかも。



 キーボードを叩く手が軽やかになる。







プルルル…プルルル……


 帰る用意をしていると携帯が鳴った。



ピッ


「はい、もしもし」


『あら優子、もう仕事終わったの?』」

「お母さん?
 今から裕太の病院行くけど。どうしたの?」