愛する人。





「嫌だ。離したら、あなたは俺から逃げるだろう?」

「……逃げな「嘘だ」



 腕を、体を引き寄せようと力は増すばかり。





「……お願いだから…

 俺から逃げないで……」




 彼を見ると。


 眉を下げて今にも泣きそうな、そんな顔をしてる。






 そっと、手を伸ばす。




 彼のメガネを外し、まぶたにキスを……。





 ――瞬間。


 彼の息が止まった。