「どうしたの?」



 心配そうな、探るような声で問い掛ける。



「なん…でも…」


 ちゃんと応えなきゃ。心配しちゃうから。

 ……なのに、声が震えてうまく言葉が出てこない。



「……何でもないわけ、ないだろっ」


 言ったと同時に、


「――っ! きゃあぁっ」


 彼が私を抱き上げた。



「ちょっ やだっ下ろしてよっ!」

「うるさい、黙ってろ」


 今まで聞いた事もない低い声。



 ビックリして声の出ない私を抱き上げたまま、寝室へ向かう彼。