愛する人。





 言われて、気付いた。


 私は泣いていた――。







「……優子さん」


 私が自分の涙に戸惑っていると、蓮くんが優しい顔をしながら私に伝えてくれる。



「泣く事を当たり前にしないで。
 涙を流すことに、慣れないで」




 ……私の心に、波紋ができた。





 彼は微笑んだまま。

 彼の顔が近づいてくる。


 見上げると、月明かりに照らされて顔に影が出来た。


 瞳を閉じると彼の唇が私のまぶたに落ち、涙を受け止める。


 しばらくすると彼の唇が離れ、私も瞳を開く。