愛する人。








 ……声がする……





『優子、見てごらん!
 ここからは桜がよく見える』

『本当!キレイだね〜』

『……来年も再来年も、一緒に見ようね』


 彼が微笑み、私も―――。



グイッ

「!?」


 左腕を力強く掴まれ頭が現実に戻った瞬間には。


 視界は回り私の後ろには桜、目の前には……。


「……蓮くん…」



 無表情の彼が、

 私の左腕を掴んだまま見下ろしていた。