愛する人。







 満開の桜の下、二人で歩く。




 蓮くんが連れてきてくれた公園。

 桜が広い敷地に目一杯植えられている。


 21時過ぎてるせいか、公園内に人は居ない。


 風のそよぐ音と少し前を歩く蓮くんの足音、私の足音だけが聞こえる。



 一際大きい桜の下で、蓮くんの足が止まった。



「……すごいね…」


 蓮くんの隣に立ち、見上げる。



 花が私の視界を遮り紺色の空が桜の花びらに飲み込まれてる。



 ……そっと、視線を左へ。


 蓮くんも桜を見上げ、何かを感じてるみたいだ。

 私は視線を戻し、ただ静かに、薄紅の花を見上げた。