愛する人。





「優子さん」



 蓮くんが緋桜を抱き上げて笑っていた。




「行こう。 あの家に帰ろう」



 手を伸ばす彼に、一歩、近付く。









 春風に乗って、甘い香りが漂った。




 近くで咲いていた桜が、風に乗って花びらを舞い散らせる。






『優子……幸せに…』






 懐かしい、声がした。