愛する人。





『―――“なんか”?

 “わたしなんか”って何?』



 女将さんは私を睨みつけた。



『あ……だって…父親のいない子供ですよ…?

 そんなの……』


『勝手に子供の価値を決めないでちょうだい。それは子供が自分で作って行くものよ。

 それに、今時母子家庭なんて珍しくないのよ?うちの従業員の半分はそうよ。

 “なんか”ってみんなに失礼よ』



 真っ直ぐ私を見て言ってくれた女将さんに、気付けば抱きついていた。


 女将さんは泣きじゃくる私の背中をずっと撫でてくれて……ますます涙が止まらなかった。