「――退け!」



 俺は睨みつける。

 それでも、彼女は目の前のドアから立ち去らない。



 俺がもう一度女将さんを怒鳴りつけようとした時、


「あの子を傷つける者は、例えお客様であろうと許しませんよ」


 さっきまでの柔らかな印象とはまるで違う、地を這うような声で俺を睨みつけてきた。




 女将さんのおかげで彼女は救われたんだろう。

 それは分かる。


 でも―――…



「何も知らないあなたが口出しする事ではない」



 もう、見つけてしまったから。


 今更逃がす事なんて出来ない。