愛する人。





コホン


「優ちゃん。立ち話も何だから、休憩室使いなさい」



 俺達の空気に女将さんは小さく咳払いすると、柔らかく笑ってそう言ってくれた。




「でも…」

「ありがとうございます。
 僕の部屋は一人なので、そちらで話をさせていただきます」



 彼女は困ったような顔で断ろうとしているのが分かった。

 そうはさせまいと俺が女将さんに伝えると、女将さんはさっきまでの柔らかな表情から一変、キリッとした表情で、


「いえ、そうゆうわけには参りません。

 彼女は当旅館の従業員でございます。お客様と彼女が顔見知りだとしても、男性のお客様のお部屋に、勤務外の従業員を入れるわけには参りません」