愛する人。





「いえ。庭を眺めていたら、偶然お会いしただけですから」



 にっこり笑って言った俺に、女将さんはホッとした表情で、優子さんに裏口から帰るように伝えた。



「では、私は…」


 慌てて帰ろうと身を翻す優子さんに、さっきまでの戸惑いが嘘のように、気づけば、彼女の腕を掴んでいた。



「―――お客様…っ?」


 女将さんが横で何事かと止めようとしてるけど、もう、離せない。




「れ……お客様、放して下さい」


 俺の名を呼ばない彼女に、言いようのない怒りが湧いた。



「蓮って……昔のように呼んでくれないの?」