愛する人。





「……優ちゃん?」



 その声に、俺はかなり焦っていたのか、恥ずかしいくらいに体が揺れた。

 それに合わせるように、優子さんの体も跳ね上がる。



「……女将…っ」

「やっぱり! こんな所で何してるの?もう真っ暗よ?

 早く帰ってあげないと緋桜くんも――」



 女将と呼ばれた着物を着た年配女性が、俺に気づいた。



「……あら、お客様もいらっしゃったのですね。失礼いたしました。

 うちの従業員が何か…?」



 先ほどの口調から一変、柔らかい口調で俺に話しかけてきた。



 ……俺のせいで怒られるかな。


 少し離れた優子さんの表情が曇った。